燻製がやめられない

東京で酒蔵見学:田村酒造

酒蔵見学:田村酒造(1)

趣きのある外観と、仄かに香る日本酒の匂い。

東京都福生市にある酒蔵、田村酒造へ行ってきました。
1822年創業(文政5年)で、敷地内に7つもの文化財があります。
敷地内へ入ると、レンガ色で変わった形の煙突と、

酒林(杉玉)が迎えてくれる。
写真では分かりづらいですが、まだ少し青い部分が残っていました。

年に一度、新酒が出来たときに新しいものへと取り替えることになっており、青々とした酒林は『新酒ができましたよ!』というお知らせでもあります。
また、酒林の色は最終的に茶色く変わるが、その色の度合いで飲み頃(熟成)を計る役割もあったと言われているそうです。

しかし、実はこの酒林、本来はお酒の神様のために軒へぶら下げているとのこと。

『神様にクィッ!と一杯やりに来てもらうため』ですかね。

蔵元の方によると、お酒の神様をまつる神社は三つあるそうです。
奈良県にある大神神社、京都府にある松尾大社、同じく京都府にある梅宮神社です。
まだ行ったことのない方は足を向けて寝られませんね。

で、何故酒林がぶら下げられているのかはメモできず、しかも忘れてしまいました・・・。

さて、そんな酒林が軒に下がる田村酒造ですが、最低10名から見学の予約が可能とのことです。
個人で10名集めるのも大変ですよね。
朝早い、遠いというだけで休日の集まり(特に酒飲み)は悪くなります。
興味のある方は是非!

そもそもの話、東京酒蔵見学が可能なところは少なく、あったとしても、まとまった人数でなければ見学できない、または、かなり先まで予約が埋まっているということも多々あります。
今回私が参加できたのは、西武鉄道の社員が電車で連れて行ってくれるという企画のおかげです。
西武鉄道の方に感謝です。
ご興味のある方は最寄りの西武線各駅へお問い合せください。
ちなみに、一人参加の方も数名いらっしゃいましたよ!

さあ本題の、酒蔵見学のお話。
田村酒造は文政5年創業で歴史も古く、東京で最初に日本酒作りを始めた蔵と言われている。
そのため、東京にある蔵元の指導的立場でもあるそうで、講習や勉強会のようなこともやっているとのこと。

現在東京には七つの酒蔵があるそうで、その中の2、3社(酒蔵)が酒造りを外注しているそうです。

使用している酒米

この蔵では兵庫県産の山田錦を使用しています。
説明によると、魚沼産コシヒカリの二倍の金額もするそうです。

精米、蒸す

酒造りはまず酒米を精米し、機械で蒸すところから始まります。

精米では、米の表面を削ります。
その削り度合い(精米歩合と言い、単位は%)によって日本酒の種類が分けられている。
精米前のお米には、表面に沢山の栄養素が含まれています。
しかし、醸造過程で発酵させる際にはそれらの栄養素が麹菌にとっては栄養過多となってしまい、品質(味)が落ちる要因になるそうです。
技術が進歩し、精米歩合を下げることも可能になり、人間の手作業では不可能なレベルまで精米(コンピュータ制御)できるようになりました。
勘に頼っていたところが解明され、機械化されたのですね。

さて、ここで国税庁が発表している清酒の品質表示基準を見てみましょう。
以下は国税庁の品質表示基準表です。

日本酒の表示について
特定名称 使用原料 精米歩合 こうじ米の使用割合 香味等の要件
吟醸酒 米、米こうじ、醸造アルコール 60%以下 15%以上 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好
大吟醸酒 米、米こうじ、醸造アルコール 50%以下 15%以上 吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好
純米酒 米、米こうじ 15%以上 香味、色沢が良好
純米吟醸酒 米、米こうじ 60%以下 15%以上 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好
純米大吟醸酒 米、米こうじ 50%以下 15%以上 吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好
特別純米酒 米、米こうじ 60%以下又は特別な製造方法(要説明表示) 15%以上 香味、色沢が特に良好
本醸造酒 米、米こうじ、醸造アルコール 70%以下 15%以上 香味、色沢が良好
特別本醸造酒 米、米こうじ、醸造アルコール 60%以下又は特別な製造方法(要説明表示) 15%以上 香味、色沢が特に良好

大吟醸などは50%も削るそうです。
もちろん、販売されている日本酒の中には40%というのもあります。

『精米歩合40%』と書かれていたら、表面を60%削ったということです。
これって凄いことですよね。
だって、仕入れたお米の40%しか使っていないってことですよ・・・。
なぜ、日本酒が高いのか納得です。
※精米作業で削られた部分に関しては、米糠の原料に使われたりするそうです。

酒蔵見学:田村酒造(2)

さて、精米作業が終わったら、熱(精米中の摩擦熱)を取り、洗米し、水に漬け、蒸す。
その後急冷し、酵母を混ぜます。

混ぜる部屋は決まっていて、蔵の奥にある部屋で行うそう。

この部屋は、入室できる人、温度、湿度など諸々を含めて厳重に管理されているそうです。
それだけ神聖な場所ということですね。
ちなみに、今日案内してくれた酒蔵の方は、十七年勤めているけど一度も入ったことがないそうです。
神聖過ぎます。


さて、日本酒造りが開始される時期、TVのニュースなどで上半身裸の男衆がせっせと白いものを混ぜて酒造りをしている姿を観たことはありませんか?
この作業(これだけじゃないか)をやるのが、杜氏(“とじ”、または、“とうじ”と読みます)と呼ばれる酒造りの責任者を中心とした男衆なのです。

杜氏とは

酒造りの最高責任者のことを言います。
昔は、杜氏は季節労働者で、酒造りの時期に酒蔵へ来て仕事をし、シーズンが終わると故郷へ戻り、家業の農業をやっている方が多かったそう。
現在は日本酒の国内需要も減り、杜氏の人数も大分減ってしまい、酒蔵の方が兼務するところもあるそうです。
海外需要は上がっているみたいだけど。

ふーん。
それは分かったけど、

そもそも何で上半身裸なの??
何で男しかいないの??

という疑問が湧いてくる。

『裸で仕事』でついつい連想してしまうのが、
映画のワンシーンでたまに観る

『麻薬カルテルで袋詰め作業をする人々』ですよね。
この場合に考えられるのは、
持ち帰り防止とワケ有り者や誘拐してきて人を働かせているので逃走防止だろうと想像する。
しかし、杜氏の場合はそういう理由ではないんです。

なぜ上半身裸なの?

上半身裸なのは、
『菌を持ち込まない』という単純な理由なんだそうです。
知らなかった。

なぜ男しかいないの?

これには諸説あるらしいが、有力だと言われている(らしい)二つの説を聞いたのでご紹介します。
・女性の化粧が混ざると味が落ちる。
・男ばかりのところに女性がいると気になって集中できない。

というのが有力らしいです。
個人的には両方あるような気がしますが。

さて、日本酒の仕込みも終わり、いよいよ発酵させる所へ移動してきました。
発酵は何段階かに分けてられているそうで、小さなタンクから大きなタンクまで並んでました。

蔵の中の見学は終わり、続いて使用する水について説明を受けます。

仕込み水

仕込み水とは、日本酒造りに欠かせないお水のことです。
蔵を建てた際、敷地内に数か所も井戸を掘ったそうだが、日本酒に適した水質が得られた井戸は最後に掘った一か所のみだったそうです。
その井戸に『嘉泉』という名をつけ、それは商品名にも使われています。
『よろこびのいずみ』と書いて『かせん』と読みます。

当時の方々がどれだけ嬉しかったか想像できますね。

現在使われている仕込み水は、
玉川上水から水を引き(田村分水)仕込み水に使用しています。
水質は中硬水とのこと。

蔵の方によると、
軟水は発酵しにくいが、きめ細やかな酒ができ中硬水とはまた違う仕上がりになるそうです。
見学の最後に試飲でるので是非試してみてほしい。

他にも、大正10年まで使用していた水車小屋の話や、敷地にある大きな欅の木や建物についての細かな説明がありましたのでご興味のある方は是非足を運んでもらいたい。
敷地内に七つの文化財があるってだけでも凄いですよね。

最後には待望の試飲もありますのでオススメです。
本日は新酒とにごり酒を試飲しました。

日本酒っていいですね。